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レビューを書いて文章力をあげたいという甘い考えの産物です。

翔太とインサイトの夏休み

翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない (ちくま学芸文庫)

翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない (ちくま学芸文庫)

小説的なストーリー性を求めるのであれば、この本は適切ではないと思います。
この本は、はっきりいって、哲学の入門書です。
といっても、いわゆる「哲学の入門書」や「教科書」というものは、アリストテレスはこーいった、ニーチェはこーいった、という学説の歴史を扱うものが多く(もしくは、多くのページを学説の説明に当てている)、むしろ「哲学者の入門書」や「哲学の歴史」に近いと思います。

その点、この本は、「哲学の仕方」を教えてくれる、という意味でとっても面白い。
特に「哲学は子供が上手なんだ!」みたいな下りがあるけど、その通りだと思います。
私も、昔は(そして実は今も)、例えば「私の感じている『痛み』はあの人の感じている『痛み』と同じなんだろうか」とかいうことを考えていたので(もちろん、それが「哲学だ」とは一ミリも思っていなかった・・・)、結構「そうだよね!」と思いながら読めました。
ところどころ難しくて考え込んだので「すんなりと」というわけではなかったけど・・・
まぁとにかく、哲学の多くのテーマを、自然に、難しい言葉を使わずに考えることができるという点では画期的な本だともいえるのではないでしょうか。
(もし他にこういう本があるのなら、紹介してください)

但し!
この本は、なんだかおさまりがよすぎる!
形式的には「この本はこれから様々なことを考える上でのヒントを与えるにすぎない」みたいなことは書いてあるし、作者のコメントにも「この本には続編にむけた沢山の伏線がある」みたいなことが書いてるけど!

でも、最後の少年がなんだか答え的なものを発見しちゃってる感じとかが、なんだかとっても残念。
(そして、最後のオチとかも私にとっては意味がわからないというか理解不能で、ちょっと微妙・・・いや、いわんとすることはわかるんだけど、あまりに非現実的というか・・・それって話と矛盾してない?みたいな。)

なんだか、もう哲学で探すべきことは全部終ったんじゃないか、とさえ思ってしまう。
哲学においてまだわかっていないことはなんなのか、それがあるのか、ということを考える余地がちょっぴり少ないというか。
哲学はまだ完結してないんだから、こんなに気持よく、収まりよくする必要はないんじゃないかな。
(とはいえ、「本」という形式にする時点で、ある程度収まりのよいものにしないといけないというのは事実ですよね・・・哲学を「一冊の本」にしようとすることがまず無理なんすね。

まーいろいろいいましたが、面白かったです。