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This is the day

レビューを書いて文章力をあげたいという甘い考えの産物です。

花埋み

花埋み (集英社文庫)

花埋み (集英社文庫)

荻野吟子という、日本で最初の西洋女性医師の話です。
彼女は、もともと頭がいいお嬢さんだったのですが、
結婚生活のなかで重大な性病をうつされます。
それがきっかけで女医を目指し、
本当に、ものすごい苦労を繰り返しながら、なんとか女医になります。
女医としては、産婦人科をメインにやってます。
その後社会活動家になるんですが、
なんと10歳以上年下の男性と結婚し、
彼の夢を追うために北海道へ移住。
しかしながら結局失敗を繰り返し、
夫が死んだあと、亡くなります。
子供は養女が一人。

ものすごい、壮絶人生ですが、
彼女の人生は決して、理解できないものでも、「偉人」の人生でもありません。

女医になりたい!という思いも、彼女の経験を考えれば当然だし、彼女の能力からみても不可能じゃない。
むしろ、当時の女性たちは、自分たちの局部を男性にみせることは嫌だったらしく、
若い娘なら別にみせてもいいし、いろいろお話もできる、ということで人気を得ます。

だけど、ある日気付くんです。
「医療じゃだめなんだ」って。
どんなに治療しても、治療を受け入れてくれる環境や考えをもっていないと、
なかなかすすまない。
だって、治療って本人の「治そう!」という意思が大事だから。

そんななかで、「キリスト教」に惹かれていきます。
別にそこまではいいの。

だけど、クリスチャンの若い男性と結婚してから、彼女は一気に彼女のキャリアの階段からおりてしまう。
北海道にいったあと、数年のブランクの後に新たに札幌で開業しようとしたら、もうあなたの技術はふるいから無理だ、といわれる。
北海道では、旦那と「クリスチャンの理想郷」を作ろうとするけど結局失敗。

けど、私は、それでも良い気がする。
もちろん、キャリアを追い続ける人生は素敵だと思う。素晴らしいと思う。
でも一方で、好きな人と、「自分の人生を楽しむ」という人生も素晴らしいと思う。
どちらがいいとか悪いとか、そんなことは誰も言えない。本人でさえもね。
だけど、後者を選択した吟子が、なんだか愛らしいと思ってしまいました。


吟子はすごい人だけど、決して「すごい人格者」だったわけではない。
男を毛嫌いしているようなところがあるし、
やっぱ気が強いから、周りに対してすごく厳しい。
けど、そういう吟子ってすごくリアルで、
しかも恋をしたりすると案外とってもピュアだから
愛しいとさえ思えました。

ただ、あえてクリスチャンとしての視点をいれるなら、彼女が「立派なクリスチャン」だったかどうかはよくわからないよね。聖書は読んでたみたいだけど。

最後に、面白かった海老名弾正の一言を(別にこの人は好きじゃないけど)。
「初代には十人並みの人物はクリスチャンになりえない。抜きん出て優れた人物か、抜きん出た凡人か、あるいは抜きん出た変物でなければ万難を排し、周囲の批判も顧みないでクリスチャンとはなりえない」

だから、過去のクリスチャンを褒めたたえるのもおかしいんだろうな、きっと。
もともと、そういう「変人」なんだもん。
なんちって。
今も変人ばっかりだけどね笑