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レビューを書いて文章力をあげたいという甘い考えの産物です。

聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち (新潮新書)

聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち (新潮新書)

聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち (新潮新書)

この本は、訪問看護の実態がわかるだけではなく、訪問看護をされている家族を含めた患者の背景や、看護師の背景がとても詳しく描写されていて、それが面白い。

看護師を含め医療従事者を考えるとき、なぜか「品行方正」な人を想像してしまうんだけど、それって実はおかしい。だって、医療従事者だって、普通の人間なんだから。特に日本の今のシステムでは、医療従事者になる、という選択をする際に自分の性格が邪魔になることはない。

もちろん、そもそも医療従事者という選択をする時点で奉仕的な性格(?)がある、とかって意見があるだろうけど、この本を読むと、「手に職をつけるため」「他に行ける学校がない」といった非常に消極的(ともいえる)な理由で看護師になっている人が何人もいる。
また、訪問看護師のリーダー的存在である「押川」は、学生時代はクラブに通い、バイトで銀座のホステスまでした強者だ。

まぁでも、そんな彼女ら/彼らは、真っ当に「訪問看護」を行い、評価も受けている。
つまり、看護に必要なのはそんな「品行方正」さじゃなくて、もっと人間臭いなにかなんじゃないか。

一人の人間である「看護師」が、職業として「看護」を行っている。
もちろん、それを受ける側は、報酬に値する看護を期待する権利があるんだろう。
だけど、やはり、それは「普通の人間である看護師」が前提なのだ。

一方の看護師も、自由にプライベートを楽しむことは禁止されていないのだが、それでも休日に出勤することをいとわない。その原動力はなんなのだろう。そこには、「人を救いたい」という一言では捉えきれないなにかがある気がする。

今後、訪問看護師も視野に入れて研究しなくてはいけない、と痛感した一冊。