This is the day

レビューを書いて文章力をあげたいという甘い考えの産物です。

人材を活かす企業

人材を活かす企業 (Harvard Business School Press)

人材を活かす企業 (Harvard Business School Press)

人事部で働いていると、どうしても、働いている「人」に興味が映る。
私みたいな下っ端だと、人と会うのはせいぜい電話やメールでだし、悩みや相談を聞く訳ではない。
それでも、周りの先輩達の電話とか聞いて、想像力を働かせて、「こんな仕事してるのかなー」と。

そんな中で、フェファーを勧められて読みました。

全体としては、「みんなコストカットとか個人主義とかいいながらリストラ/成果主義賃金に走ってるけど、それじゃいい会社は育たない!長期的な視野に立って、『人材』を育成すべきなのだ!」というメッセージが漲っています。当然、日本の例も『良い例』(終身雇用だから教育制度が素晴らしい!とか、『カイゼン』が職員の自主性を育ててる!とか。)としてとり上げられています。

2000年代初頭の「アメリカ型の雇用慣行万歳」な風潮のなかでは、結構斬新に見えたのかもしれないですが、今みると、少し陳腐。
それは『人財』みたいな「軽い『社員主義』ワード」が浸透し過ぎちゃってるからかもしれません。

アメリカ型の雇用慣行を追随しても、皆が思ってる様なハッピーな結果にはなりませんよ、という実例が沢山載っているのは示唆的ですが、じゃあどうしたら「良い会社」&「良い社員」が育つのかは実は不明。
「こんな優良企業は、こんなに『人材育成』『教育』に力をいれている」
「社長がこんなコメントだすような素晴らしい企業があるんだぜ!」
という『実例』は大量にでてくるけど、日産みたいに首を切りまくって『上手くいっている』会社とかをとり上げていないだけ、つまり、都合のいい会社をより集めているだけともいえなくない。
また『分析』といえるほど深く分析をしているともいえない。なぜなら『なぜうまくいっているのか』という具体例の部分に「教育に力を入れている」「社員の自主性を引き出す努力をしている」「少数精鋭」以上のなにかがないから。

と批判的なメッセージを数多く残してしまいましたが、本著の最大の贈り物としては「結局人間関係で信頼を勝ち取れるかどうかでしょ」という重要な示唆があります。
会社が社員を信頼できるか、社員が会社を信頼出来るか。これは結構大きな問いですよね。社員に対して情報開示をし、社員側も「搾取されない」という安心感があれば、たとえ会社が傾いている状況でも、みんなで力を合わせることができる『こともある』のでしょう。

まぁでも、性悪説をとる私としては、そーんなに綺麗なお話だけではすまないような気もしてしまうのです。

とりあえず、少し時間をおいて、もう一度読み直したい本ではあります。

誤解されたかもしれないですが、私はフェファーの考え方、大好きです。